ブーメラン効果は、恋愛や結婚生活、仕事など身の回りのことから、教育心理学や社会心理学、経済学、行動経済学など幅広く絡んでくる理論です。
メカニズムを理解して、人や自分とうまく付き合っていきましょう。
ブーメラン効果とは?

心理学でいうブーメラン効果(ブーメラン現象)とは、相手を説得するとかえって逆効果になり、説得した内容とは逆の行動や態度を取ってしまうという理論です。
説得の逆効果と呼ばれることもあります。
相手を説得しようとすればするほど相手から抵抗を受けてしまう。
勉強しろ!って言われると抵抗したくなる、あの感じがまさにブーメラン効果です!
英語ではBoomerang effectと書きます。
ブーメラン効果の語源・由来は?

語源は、ある物事の結果がブーメランのようにその行為をした人に返ってくることです。
主に、負の効果をもたらす現象をブーメラン効果といいましたが、これが派生して、心理学だけではなく経済学などでも使われるようになりました。
関連記事⇒【経営者なら必見!】経済学からみるブーメラン効果の意味とは?
本来、ブーメランは戻ってくることが良いというイメージが先行しやすいですよね。しかしブーメラン効果の場合は、戻ってきたブーメランで自分自身が傷つくことを連想させるので、主に悪いイメージで使われます。
悪口を言ったら自分に返ってくるとか言うけど
それは掘り下げると脳科学の話になってしまうので
またの機会に書こうと思います!
ブーメラン効果の具体例
ブーメラン効果は、ぼくたちの日常においても様々な影響を及ぼしています。
ここでは、5つの具体例をご紹介します。
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それぞれみていきましょう。
(1)恋愛でみられるブーメラン効果

恋愛に失敗しないために、大事なポイントです。
猛烈にアタックすると逆に煙たがられて、距離を置かれてしまうなんてことも。。。
あとは、付き合っている人に対して
浮気しないでね!絶対だよ!
と説得するのもブーメラン効果が働いてしまうことがあるから気を付けよう。
これをダチョウ倶楽部効果と呼びたい。。。笑
おすな、おすな、おすな、おせよ~。
(2)教育でみられるブーメラン効果

ブーメラン効果は、教育心理学の観点からも語られます。
人は自分の自由を侵されると、抵抗したくなる。
勉強しなさい!
席に座りなさい!
姿勢を正しなさい!
学校に行きなさい!
普段からこういうことばかり言っていると
子どもはストレスやプレッシャーを感じて
あなたが思う事と逆の考えや行動になりやすくなるんだ。
気を付けよう。
(3)仕事でよくあるブーメラン効果

営業やマーケティングにおいて説得すればするほど、売上は上がらない。
例えばあなたに保険の営業マンが訪ねてきたとする。
何度も何度も頻繁にあなたの元を訪れては
「契約して下さい」
「買って下さい」
「この商品のここが魅力的ですよ」
なんて延々と営業されたらどう思うだろう?
ますます距離を置きたくなるんじゃないかな。
(4)政治にありがちなブーメラン効果

国際政治にも当てはまる事例です。
例えば
政治家の人に投票してください!と言われると
逆に投票したくなくなるって言っている人がいたけど
それも説得の逆効果が働いていたのかもしれないね。
人間は
説得=自分の自由意思を侵されること
って無意識的に感じてしまうんだ。
(5)物語にみられるブーメラン効果

有名な物語の事例です。
イソップ寓話で知られる「北風と太陽」は有名な話だよね。
あるとき、北風と太陽が力比べをしようとする。そこで、旅人の上着を脱がせることができるか、という勝負をする。
- まず、北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとする。
- しかし寒さを嫌った旅人が上着をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができなかった。
- 次に、太陽が燦燦と照りつけた。
- すると旅人は暑さに耐え切れず、今度は自分から上着を脱いでしまった。
これで、勝負は太陽の勝ちとなった。
引用元:Wikipedia 北風と太陽
「押してダメなら引いてみろ!」っていうのも
心理学的にみたら案外、理に適っているのかもね!
この物語の教訓は?
手っ取り早く乱暴に物事を片付けてしまおうとするよりも、
ゆっくり着実に行う方が、最終的に大きな効果を得ることができる。
また、冷たく厳しい態度で人を動かそうとしても、
かえって人は頑なになるが、暖かく優しい言葉を掛けたり、
態度を示すことによって初めて人は
自分から行動してくれるという組織行動学的な視点もうかがえる。
引用元:Wikipedia 北風と太陽
ブーメラン効果を生み出す要因
結論からいうと、ブーメラン効果を生み出す要因は「自己を守りたい欲求」です。
人は本来自由でありたい。
しかし、人は説得されると「自由を奪われる脅威」を感じます。
その反作用で抵抗したり、反抗したり、逃避したり、なんらかの行動を起こすんですね。
特に強い抵抗を生み出してしまう原因は、大きく分けて5つです。
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1.自分の立場や意見に対する強い責任感を感じている
人には自分の役割や立場、それに伴う責任感があります。
そのため、自分とは違う価値観に基づく説得を受けると、余計に反発したくなります。
そんな時にいくら説得をされても効果は薄く、かえって反発を招く場合があるんですね。
2.自分の信念や大切な価値観に対する説得が行われた
自分の中の深い価値観とつながった信念や考え方を説得されることは、自分の存在への攻撃として受け止めらます。
説得を受ける=自分という存在を否定される
ということにも繋がることがあるんですね。
3.「説得を行う」などと予告された上で説得が行われた(説得予告)
自分が重要だと思っている価値観に対して「これからあなたを説得するね」と予告を受けることは、反発を強めます。
4.自分が嫌う人から自分の意見に対する賛同を示された
いくら賛同を示されても、嫌いな人に対してはいつも敵対関係でいたいという心理が働いてしまいます。
5.押しつけがましい態度によって賛同を示された(心理的リアクタンス)
どんなに賛成されても、相手が押し付けがましい態度で賛同してくるようでは、心理的リアクタンスが働きます。
そのため、こんなやつとは対立関係でいたいという心理が働いてしまうんですね。
関連記事:心理的リアクタンスとは?
ブーメラン効果の実験結果や効果
ブーメラン効果の実験・研究は1960年代になってようやく始まりました。
その当時、アメリカの心理学者コーエン(Cohen )はある実験を行います。
ブーメラン効果の実験内容~男女共学に関する説得実験~
実験概要
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実験内容
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1.男女共学に「反対の人」と「どちらかといえば賛成の人」に分ける。

2.男女共学に「反対の人」が「どちらかといえば賛成の人」に説得を開始する。

男女共学に反対の人=被験者 |
男女共学にどちらかといえば賛成の人=実験の協力者(サクラ) |
3.「どちらかといえば賛成の人」は態度をこのように変えていく。
どちらかと言えば賛成⇒賛成⇒大賛成

賛成をどんどん強めていきます。
これは、すなわち被験者の意見を、どんどん否定していることを意味しています。
ブーメラン効果の実験結果:強い反発には強い反発が返ってくる

説得の場面において、説得する側は相手に同調してしまうことが多々見受けられますが、、、
結果はなんと!!!
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「賛成」へと少しだけ態度を変えた相手を担当した「反対意見の人」の中には、同調者が多く出ました。
しかし、「大賛成」へと大きく態度を変えた相手を担当した「反対意見の人」の中には、同調者が2割弱しかいませんでした。
つまり
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よってこの実験で分かるのは
強い反発には強い反発が返ってくる!ということです。
ブーメラン効果のリスク対策

ここまでブーメラン効果の意味や語源、実験結果や効果などについて見てきました。
意外と日常で起きていることなので、ここでは対策について重要なポイントを3つまとめました。
ブーメラン効果とうまく付き合っていくためには?
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無理に説得しようとしない
無理に説得しようとすると、人は壁をつくって反発する性質がある。
説得しようとすればするほど、ドツボにはまっちゃう。
ここは無理に説得せず、気長に待つという手も使ってみてはどうでしょうか。
説得の前に相手の理解に努める
相手はどんな価値観を持っていて、何を大切にしているのか理解に努めてみましょう。
説得なんてしなくても、より良い関係性がつくれます。
相手の自由を尊重してみる
とびっきりのド変態を除いて、人間はみんな自由でありたいもの。
まずは周りの人の自由を認めて尊重することで、お互い良い距離感が保てるのではないでしょうか。
それができない人はいったん自分が自由になることを許していくと、周りの自由も尊重できるようになります。
ブーメラン効果に関連する心理学
ブーメラン効果に関連する心理学をご紹介します。
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(1)心理的リアクタンス
心理的リアクタンスとは自由を制限されると、激しく抵抗して自由を回復しようとする心理です。
人は、とにかく自由を制限されることを嫌います。
(2)ホーソン効果
ホーソン効果とは、人から見られていると頑張ってしまう心理です。
人間は、他人から介入されるのは嫌ですが、他人から見られているとついつい頑張ってしまうんですね。
(3)ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、教師が期待することで、生徒の成績が向上する心理です。
勉強しろ!と頭ごなしに言われるよりも、ただ期待されることの方が、かえって成績が伸びるということですね。
(4)スリーパー効果
スリーパー効果とは、時間の経過とともに「情報に対する信用度」を忘れてしまう心理です。
つまり、入ってきた情報が信用できるかどうか、時間が経つと忘れてしまうということですね。
人は説得されると抵抗しますが、時間が経つと忘れます。
長い目でみて相手を説得していくと、スリーパー効果によって信頼を得られるようになります。
ブーメラン効果のまとめ

「人間は説得によって自由を制限されると激しく抵抗し、反発しようとする」性質を持っています。
説得の逆効果といって、人を説得するつもりがかえって相手の抵抗や反発を招いてしまうんですね。
相手を説得しようとすればするほど、説得から遠ざかっていくという悲しい現象です。。。
ポイント
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